一時は2打差をつけられる苦しい展開。石川は、懸命に追い上げた。単独トップでスタートした最終ラウンド。1番をバーディーにする絶好のスタートだった。大きな転機になったのは6番(パー5)ホール。第3ラウンドには、ティショットを池に打ち込みながらバーディーを奪ったホールである。
この日は、逆に、大きくスコアを崩すことになった。第3打がグリーン左手前のバンカーにつかまった。ピンまで距離のある難しい状況だった。イメージを描き、集中してアドレスに入った。そこで、カメラのシャッター音が…。
いったんアドレス態勢をほどいた石川は、思わずギャラリーに「すみません。カメラはやめてください」。これまで、こ
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うしたことは何度もあったが、石川が直接注意することはなかった。日本オープンという舞台に立っている。常にない緊張感の中で、ありったけの神経を集中して1打に臨んできた。それを乱されることに、我慢できなかったのだろう。仕切り直してのショットは、大ホームランとなってグリーンをはるかにオーバーしていった。奥の林の中。ここからのアプローチショットもピンを大きくオーバーしてのダブルボギー。これで通算4アンダーパーとなり、先行する小田龍一に並ばれてしまった。9番でも3パットのボギーと、石川らしくないプレーが続いた。
ここからの追い上げだった。10、14番とバーディーにしてスタート時点の5アンダーパーに戻す。同じ組でラウンドしていた今野も15、16番と連続バーディーを奪って通算6アンダーパー。ここで今野と、先に18番をバーディーにしてホールアウトしていた小田がトップに並び、石川は1打差の3位という流れだった。
17番で左ラフからグリーンをとらえ、8メートルもあるバーディーパットを決めて小さく、何度かガッツポーズを繰り返した。6アンダーパー。トップタイに並んだ。そして、そのまま3選手によるプレーオフへの突入となった。
2ホール目。奥のカラーからのバーディーパットが、ホールの右縁で蹴られてしまう。「日本オープンという最高の試合で、しかもプレーオフという緊張のピークの中でのパッティング。自分で思っているよりも強くヒットしやすいと考えて、フックラインの曲がり幅を小さく設定して打ちました。でも、タッチが合いませんでした」
このあと、小田にウィニングパットを決められ、昨年に続いての2年連続2位という結果になった。
「呼吸が詰まるくらい難しいプレーが20ホールも続いた後だからでしょうか、終わったあとに、これほど清々しい気持ちになったのは、初めてです。プレー中のシャッター音? 今となっては神経質になりすぎていたのかもしれません。でも、できれば優勝してから言いたかったのですが、初めて観戦にいらっしゃった方や、ゴルフ観戦でのマナーを御承知でない方がいらっしゃるかもしれません。ぜひ、マナーを守って観戦、応援していただきたいと思います」
清々しさの後には-。
「きっと、口惜しさが込み上げてくると思います。その口惜しさをバネにして、残るトーナメントを戦い抜きます。そして、来年の日本オープンこそ…」
最後は言葉にしなかったが、一点を見つめるような真剣な表情から、思いは十分に伝わってきた。
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